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庭の果物を地域でシェアする試み(バンクーバーA to Z:番外編[The Fruits Tree Project])

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バンクーバーは町の規模の割に食べ物への関心が高いです。 
それが面白くて、いろんな集まりに顔を出すようになりました。
前回のいろんな食べ物ワークショップを通じて人とつながりを作る
the food conectionについての記事で
vancouver fruit tree projectのことを紹介しました。
これは個人宅の庭に実る果物をボランティアが収穫して、
地域でシェアするというプロジェクトです。
先日、ちょうど果物収穫のボランティアに参加したので、その様子をレポートします。

kokeshiwabuki.hatenablog.com

 
○プロジェクトの仕組み

もうじき収穫の秋です。
よその家の庭で、柿なんかが実ったまま腐ったりしていくのを見かけることがあります。そんなとき、「せっかく実っているのにああもったい」ないなんて思ったことはありませんか。
あるいは、自分の家に果物の木がある人だと、庭で果物が実っているけど、収穫する時間もないし、家族が少ないから腐らせてしまう。「何かいい活用法はないだろうか?」なんて悩んでいる人もいるのではないでしょうか。


そういった家庭の庭で実る余った果物を地域でシェアする仕組みが、
Vancouver Fruit Tree Projectです。

vancouverfruittree.com


提供者も収穫する人もすべてボランティア
応募は簡単で、ボランティアになりたい人は、事前にメールで登録します。
果物を提供してくれる協力者の庭の果物の収穫時期がくると、
収穫する果物と、日にちと大まかな場所がメールで届き、収穫する人を募ります。
メンバーは先着順で確定し、収穫ボランティアは当日、指定された場所に向かいます。


○炊き出し用のアップルを収穫
8月のある晴れた午後、さっそくアップルの収穫があるというので
さっそく参加しました。

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8月から9月にかけてはアップルの最盛期。ほかにもチェリー、イチゴ、ぶどう、プラムなどのがあるそうです。庭の木といえども、多様性に驚きます。

集合場所に行くと、ピックアップリーダーのCaroさんが迎えてくれました。
ピックアップリーダーはいわゆる現場責任者で、当日収穫に必要な道具を持ってきたり、収穫した果物を指定された場所に届けたりします
車を運転でき、所定の研修を受ければ誰でもなれるそうです。
最初に説明を受け、「収穫時の怪我や植物アレルギーが起きても個人の責任」という誓約書にサインをします。

f:id:kokeshiwabuki:20160819181829j:plain

たわわに実ったリンゴ。残念ながら品種はわからないそう

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収穫用の道具。うまく枝をひっかけて、先のカゴや網に果物を落とす仕組みになっています

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今回の収穫ボランティアはたまたま女性ばかり。地元のニュースを扱うWebサイトやファーマーズマーケットで知って応募したそうです

フルーツ収穫は、バンクーバーに来てから一度ブルーベリーピッキングに行った以来。
リンゴは初めてでした。
木は高く、実の量が多そうです。

まずは落ちている実や傷んだ実を拾います。
これは寄付せず、地域にあるコンポスト用やハチを飼っている人のための、蜜バチ用の餌になります。
背が届く範囲は手でちぎり、届かなくなるとだんだん道具を使って、上の方を収穫していきます。
枝が揺れると実が落ちてくるので、頭上を注意しながら収穫します。
2時間ほどかけて、作業は終了。
最後に計量しておしまいです。

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2時間かかって1つの木から100パウンド(約50キログラム)ほど採れました

収穫中に地面に落ちたリンゴはボランティアで分け合います
これを楽しみにきている人も多いとか。
今回採れたリンゴは、バンクーバーダウンタウンイーストサイドエリアにある
カーネギーホールに寄付するそうです。

ダウンタウンイーストサイドエリアというのは、『地球の歩き方』等のガイドブックでは、必ず行ってはいけない危険地域として書かれています。というのも貧困層が多く、ドラッグユーザーが集まる犯罪多発地域と言われているからです。
カーネギーホールはこのエリアの中心になっているコミュニティセンター(地域の公民館のようなところ)で、貧困層への支援プログラムを実施したり、無料の炊き出しをしたり、食堂で安く食事ができます。
収穫したアップルは炊き出しや食堂で使われると言っていました。


○食に困る人に新鮮な地元の果物を

このプロジェクトが始まったのは17年前。

・食べ物ごみを減らす
・地域の人びとが食べ物で困らないようにする
・果物収穫を通じて人とのつながりをつくる

ことを目的にスタートしました。
現在では収穫量が年々増えており、カーネギーホールの他、デイケア(カナダの保育所のような子どもを預ける施設)や地域の個人宅などに分配したりしています。

 

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大型スーパーには設置されているフードバンクへの寄付コーナー

バンクーバーのスーパーには、フードバンクに食べ物を寄付するためのボックスが設置されています。フードバンクというのは、食に困っている人に、個人や企業から食品の寄付を募り、分配する団体で、大型スーパーにはたいてい個人から食品の寄付を募るためのボックスが置いてあります。しかし、その中身を見るとどうしてもファーストフードや加工食品が多く目につきます。
カナダは農業国とはいっても、スーパーで売られている果物の多くはアメリカ、メキシコ産です。また、地元産の果物の旬の時期はとても短く、食べられる機会が少ないです。もちろん、ファーマーズマーケットはさかんです。しかし、スーパーで売られている野菜や果物と比べると値段は割高です。
食べ物に困っている人ほど、新鮮な野菜や果物、旬の食べ物に触れる機会が少なくないといいます。The Fruits Tree Projectは、食べ物に困っている人が地域で採れた新鮮な果物を口にする機会を提供していると感じました。


○「都市の幸」を活用した小型のフードバンク

わたしはこのプロジェクトを知り、「都市の幸」という言葉を思い出しました。
これは、坂口恭平さんのゼロから始める都市型狩猟採集生活 (角川文庫)
という本に出てくる言葉です。

   

 

この本では、狩猟採集生活になぞらえて都市でただ同然で手に入る資源を手に入れて自給自足的な生活する方法を提案しています。
その中で廃材や古着、賞味期限切れの食品といった都市生活で余ったりゴミとして処理されるけどまだ使える資源のことを「都市の幸」と呼んでいました。

前述のフードバンクはそういった企業や個人の持つ「都市の幸」を活用して、食べ物に困っている人を支援する仕組みです。
このプロジェクトは、町中に点在する果物の木という「都市の幸」と収穫ボランティアをメーリングリストによってつなぎ、食べ物に困っている人にそれら「都市の幸」を届けています。このことは、町に点在する果物の木という食料貯蔵庫を利用したフードバンクのようにも見えます。

この取り組みはカナダではメジャーなようで、似たような活動が、バンクーバー以外にオタワ、ウィニペグ、ビクトリア、エドモントンとカナダの各都市に点在しています。

参加の簡単さや仕組みのシンプルさなどを考えると、この取り組みは今後世界に広がる可能性を秘めていると感じます。
日本でも誰かチャレンジしてみませんか?

(The Fruits Tree Project)

https://vancouverfruittree.com/volunteer/

参加費 無料
 ※事前にメンバー登録が必要。
主な活動時期 5月から9月


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